DJI Avata 2 導入しました

ドローン界隈の人が盛り上がっている新機体、DJI Avata 2を導入しました。こちらはいわゆるFPVと言ってゴーグルで機体からの映像を見ながら飛行させるタイプ。詳しいレビューなどはYouTubeにあふれかえっているのでそちらに任せるとして、撮影や点検の現場で使用する視点から、これまでの自作系ドローンとの違いについて考えてみたいと思います。

Avata 2 DJI公式ストアより

もちろんAvata 2 が万能というわけではありません。しかし特殊な場合を除けば広く対応できると思われます。

飛行時間が圧倒的に長い!

一般的な自作系FPVドローンの飛行時間は3〜5分程度。Avata 2 は約20分。テイクごとにバッテリー交換する手間と時間が大幅に抑えられます。パイロット側からすると「集中力が続かない」という懸念があるほど。

カメラのチルトができる!

Avata 2 では操縦しながらカメラを上下に動かすことが可能に。しかもほぼ真上と真下に向けることができます。これまでにないダイナミックな画角や、点検時に大いに使えそうです。しかも飛行しながら映像と写真の切り替えもできます。プラントや屋根裏などの狭隘部点検ではかなり助かります。

インターバルが短い!

飛行時間が長いのでバッテリー交換回数が少ないのは上述の通りですが、これまでは撮影用カメラ(GoProやInsta360など)をREC状態にする手間がありました。機体との連携は基本的にないので、スマホアプリで設定する必要があったのです。Avata 2 ではゴーグルや送信機で設定ができるのでフライトから次のフライトのまでの時間が大幅に短縮されます。

機材がコンパクト!

これも効率化に寄与するひとつ。撮影現場に持ち込む機材が減ります。自作機系ではメンテナンス品や予備品などを含めるとなかなかの大荷物に。Avata 2 なら機体、送信機、ゴーグル、バッテリー、充電器があればOK。せいぜい万一に備えて予備機を持ち込んでおくくらいでしょうか。現場間の移動も機材が少ないので短縮できそうです。

壊れにくい!

自作機では軽量化のために配線や基板がむき出し。いくらこまめにメンテナンスしていても、ちょっとした接触や移動時の振動などで壊れることも少なくありません。Avata 2 なら頑丈な樹脂に包まれているのでその心配はほぼありません。

撮影クルーとのイメージ共有がスムーズ!

撮影や点検の現場ではパイロットはゴーグルの映像を見て飛行し、それをリアルタイムに外部モニターでディレクターさんにも見てもらいます。これまでも可能でしたが、専用のモニターを用意する必要がありました。Avata 2 では有線ケーブルをスマホやタブレットにつなぐだけで外部モニターとして使えますので、意思疎通が簡単に図れます。

自動でホバリングする

一般の空撮機のように舵を入れなくてもホバリングしてくれます。屋外ならGNSSを受信し、風があってもその位置をキープします。一次的なリスクの軽減は図りやすいかと。

カメラ性能も問題なし!?

執筆段階では実際に試していませんので断定はできませんが、最新のGoProと比較してもAvata 2 はプロの撮影現場で十分なカメラ性能を有しています。Log撮影もできるのでポスプロ作業もスムーズかと思われます。

懸念されること・・・

Avata 2 の映像伝送は2.4GHz帯を使用します。これまで撮影現場で使用するFPV機体は遅延の少ない5.8GHz帯。これは飛行する側にとっては大きな違いで、資格(無線免許)が不要なのです。5.8GHz帯の業務利用には陸上特殊無線3級以上の国家資格を取得し、総務省への開局申請、JUTMへの加盟が必要でした。つまりドローンとして航空局の許可・承認を得た機体・パイロットならだれでも利用でます。

そこが懸念点。

ハードルが下がったことで「チャレンジしよう!」という方が増えるのは大いに良いのですが、質の低下、撮影価格の下落、そして事故が起こると思われます。もちろん発注側からすれば安いに越したことはありません。しかし肝心のクオリティが伴わなくては本末転倒です。特殊な現場になればなるほど失敗は許されません。ドローンでの撮影業務はただ「撮るだけ」ではないのです。

まとめ

Avata 2 はプロの世界でも激震が走るほどのインパクトを持っているのは間違いありません。「思ったより早く出たな」というのが率直な感想。おそらく照明やアタッチメントも続々登場することでしょう。でも重要なので何で撮るかではなく、どう撮るか。自動航行であってもそれに対応できるパイロットが生き残っていくと思います。

なによりも、ご安全に。

第3弾「GREEN SEED ドローン飛行体験」空撮を担当しました。

大阪梅田ツインタワーズ・ノース1階コンコースで開催中の夏の天井装飾「GREEN SEED」。MOVIEの第3弾「GREEN SEED ドローン飛行体験」編が公開されました。空撮はすべて弊社が担当しました。いい感じに編集していただいて感謝です。

マイクロドローンとDJI MAVIC3を使用しています。

https://umedayuen.com/

夏の撮影対策

夏の屋外撮影ではさまざまな対策が必要です。とくに空撮の場合はドローンの安全のためにも重要になってきます。

〈暑さ対策〉
目視、目視外飛行とも炎天下で操縦せざるを得ない場合が多いうえ、人家の少ない山間部での飛行も多くなります。まずは操縦者、補助者の人体の安全から。一般的な熱中症対策はもちろん、飛行していないときに暑さををしのげる待機場所を確保しておきましょう。クルマや軒下、木陰など。最近ではウェアラブルの扇風機がありますのでこれを利用するのも良いでしょう。ただしFPVなどでのノイズには注意が必要です。したたる汗を拭うタオルも忘れず。ドローンもバッテリーやモーターが高熱になると危険です。できるだけ涼しい場所で管理しましょう。

〈虫・ヘビ対策〉
これも侮ると大変です。汗をかきながらじっとしているとすぐに蚊が飛んできます。草むら、山間部ではアブ、ハチその他いろいろ。気が散るだけでなく、スズメバチに襲われると生命の危機ですし、操縦者を失ったドローンがどうなるか。対策としてまずは肌をできるだけ露出しないこと。次に虫が少ない開けた場所を探すこと。虫除けスプレーと虫刺されの薬は必ず持参。山の木陰ではヒルが落ちてくることありますし、意外と厄介なダニもいます。池や川、山にはヘビ・マムシもいます。足元はトレッキングシューズ、長靴が必要です。

〈その他〉
目視飛行の場合はサングラスが欠かせません。スマホなど輝度の低いモニターの場合はフードなどで陰を作るようにしましょう。またゲリラ豪雨など、突然の雨や雷にも要注意。人家や車両から遠く離れる場合は軽装備になりがちなので、補助者を増やすなど事前の準備が重要です。スマホも十分に充電しておきましょう(緊急連絡用)。まれに山奥の谷間などは電波の届かないエリアもありますので、その場合は細心の注意と対策が必要です。

〈まとめ〉
夏の屋外撮影は外的な影響が大きく、体力も激しく消耗します。事前に現場を想定した装備、服装で望みましょう。

では、ご安全に。

MAVIC3 CINEは是か否か 〜半年使って〜

DJI MAVIC3 CINEを2021年11月の発売直後に購入して、半年使ってみてのレビューです。企画、空撮、地上カメラ、編集を担当する側として、結論から言うと、非常に満足しています。

とは言え、あなたが何を必要としているかで評価は変わります。私の場合は、はじめに初代Mavic Proを購入し、Mavic mini、Mavic Air2s、そしてMAVIC3 CINEへ。ワンオペでの空撮業務にはMAVICシリーズがちょうど良かったことがまず大きな要因です。

Air2sは噂されていたMAVIC3を待ちきれず購入しました。これはこれでよりコンパクトながら性能は優れており、一般的な空撮なら十分こなせるスペックでした。ただ空撮を始めてからすぐに地上カメラの必要性を強く感じ、ハイスペックなフルサイズ動画機とレンズなどを短期間に揃えて「ある程度」のレベルは習得したつもりの私にしても、Air2sの映像はどうしても見劣りします。いくら4Kであっても、1インチセンサーであってもです(もちろん初代Mavic Proにくらべれば格段に良くなったのですが)。端的に言えばAir2sは個別の性能は素晴らしい性能を持ち合わせているものの、同時使用ができないのです。スペックほど能力が発揮できません。またF値(絞り)が変更できないのも、現場での運用では不便でした。

そんなモヤモヤした中で発売された待望のMAVIC3、そしてMAVIC3 CINE。センサーはさらに大きくなりそしてCINEに至ってはApple ProResコーデックでの録画が可能。カメラはHasselblad!(といっても今はDJI傘下ですが)。驚くべき進化と、驚くべき高価格(Premiumコンボで583,000円)。もはやコンシューマー機とは言えないものになりました。

私はドローンを仕事で使うため、素直にCINEを選びました。ProResを使うかどうかではなく「使えるかどうか」が重要だったのです。ただしデータサイズは超ヘビー級(マルチストリーム編集が可能とはいえ)です。また当時、スマートコントローラーが欲しかったのですが、品薄でした(後継が発売される噂もありずっと買い控えていました)。撮影現場でiPhoneやiPadでは非常に不便です(まず輝度が足りないし、飛行中に電話やメッセージが来ると集中できない、そして何よりプロっぽくないw)。MAVIC3に合わせてDJI RC Proも発売されました。これ最高です。コンボには当然入ってます。
またそれまでのMAVIC(に限らず)バッテリーはコンボだけでは足りず、さらに2〜3本は買い足していました。しかしMAVIC3はコンボの3本でほぼ対応可能。そこそこのポータブル電源があれば1日回せます。さらにHasselbladのNDフィルターも8枚ついていますし、CINEは1TBのSSDも積んでますし。

結論として、私の場合はコンボのセットがあればとくに買い足す必要がありませんでした。なので内容からすれば割安と感じています。単純比較はできませんが、Inspire2をフルで揃えるのとくらべて、という次元の話になりますが。

でもコンボでひとつだけ要らないモノもあります。それはキャリーバッグ(単品でなんと30,800円!)。これがとにかく使いにくい。。。仕事の現場であのバッグもちょっとイヤ。なので発売前のサードパーティ製ハードケースをすぐに予約しました(実際使いやすくてしっかりしてて、そして安い)。

DJIストアより

CINEがあるから仕事が入ってくるわけではありません。ドローンの資格があるから、というのも然り。私の場合はマイクロドローンや企画、編集、グラフィック、販促の合わせ技一本でどうにかやっています。映像だけなら何十年の熟練の方が、何千万もの機材でやっているプロ中のプロにかなうわけありません。もしそのレベルの話が来たら、そのプロに依頼するまでです。それでも100万円足らずでマネゴトができる時代ですし、それによって得た経験で依頼の仕方も変わっているはず。
ましてSNS全盛のなか、インスタントな映像もそれなりにニーズはあるのです。が、しかし、費用をもらう以上は一歩でも近づくように日々努力(と出費)は欠かせません。なにより体験すること、そして素晴らしい映像をまねてみること。究極は何で撮るかではなく、何をどう撮るか。事前の企画・ディレクションがとても大事なのです。trial and errorです。

あと20歳若かったらなと、ときどき思いますけどね。